S先輩の空手の指導は、内弟子だけあって先生の教えに忠実に沿ったものでありました。
先生はいなくてもS先輩についていけば上達すると確信できたのです。
違ったのはS先輩がまだ若く、20代後半から30代前半だったのではないかと思われたことです。
日本の極真の道場に通っていたけれどもそこに満足しきれず、先生を頼って渡米し入門したとのこと。
先生もよく受け入れてくれたものです。
体は先生と同じであまり大きくはなく、先生と同じくらいの身長でした。
それで大きなニューヨークの生徒たちと組手をやっているのですから、大したものです。
出身は私たちと同じ雪の降る東北地方の小都市で、そのことも先生が先輩を受け入れた理由の一つでしょうか。
雪に埋もれて暮らしていると辛抱強くなるのかも。
道場の組手は先生の方針で、先輩は後輩の突き蹴りを受けたまに強く返してやること。
後輩は先輩に思いっきり攻撃してたまに返ってくる攻撃を気を付けて受けること。
ということで、S先輩は私たち後輩の突き蹴りは受けてくれます。
力いっぱい攻撃しても全然聞いていないような感じ。
鋼鉄の体を持っているようです。
まだ白帯なので、先輩が返すことはありません。
ともかく、慌てず、突きや蹴りは一つ一つ体重を載せて攻撃するように体を打たせてくれました。
先生の空手は一発で相手を倒すことのできる空手。
その力の養成の始まりが、一発一発体重を載せられるのかということです。
先輩は人間サンドバッグの状態ですが、先輩の体は少し赤みを帯びるだけ。
どうなっているのかさっぱりわかりません。
稽古が進むにつれだんだん先輩も少しづつ返してくれるようになりました。
また私にも後輩ができ、後輩の突き蹴りを体で受けるようになりました。
そこではじめてわかりました。
だんだん皮膚が打たれることになれるということが。
最初は打たれたところが内出血するのですが、1カ月も過ぎるころには、内出血せずに赤みを帯びるだけになるのですね。
また受けることによって、衝撃の程度がわかることができるようになります。
おなかに受けても、力の込め具合で倒れずに済むこともわかりました。
でも確かに痛いことは痛いのです。
先生の教えは、「顔に出してはダメ!」ということでした。
顔に出せば相手は勢いに乗って攻撃してくるからです。
みんなS先輩のもと、懸命に稽古に励んだのでした。
私と武道との出会いについて⑦
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